私はこの文章を読んで、田中正造が直訴の前夜に幸徳秋水を訪ね、直訴状の原文を依頼していたことを初めて知った。直訴に及んで、幸運にも明治天皇が直訴状を読んだ時に、天皇の心を動かすような名文でなければ足尾の人々を本当に助けることは出来ない、と考えて幸徳秋水に依頼したのだろう。弱い人々、声を上げることができない人々の苦しみや悲しみに心から共感し、どうしても彼等を助けなければと考えた田中正造の執念を感じると共に、彼の覚悟に自らの覚悟を持って応じた幸徳秋水の心意気も素晴らしいと思った。
印象に残ったのは田中正造の日記である。「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を荒らさず、人を殺さざるべし」という言葉は、人間が自己自身を生かすには自然と共存してゆくべきなのだということを、彼がはるか昔に看破していたことを示している。私たちは自然から多くのものを享受しているという事実を知ると同時に、そのためには自然と深く関わる人々の生活を大切にしなければならない、ということを強く教えられた。
この文章を通して、私は人のために生きることの尊さと厳しさを学ばせてもらったと思う。本当に人の役に立つためには、しっかりとした理想を持ち、ゆるぎない覚悟を持ち、そうした理想や覚悟に見合うだけの積極性や行動力を持っていなければならない。それは将来医師として働く自分自身にとっても全く当てはまることだ、と私は強く感じた。(593字)
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