現在は2次試験の科目として課されている。60分800字で配点50点。当日黒板に問題(テーマ)を板書する。最初の頃は「一冊の本」といったような非常に易しめの問題を出していたし、原稿用紙も800字の課題に600字の用紙を配るほどいい加減であったが、その後1次試験に移行し、突如難易度を引き上げた。その内容はやや難しめの課題文を読んで100字要約と500字意見論述を行うというものであり、当時の私立医学部の小論文としては断トツに難しかった。これを数年続けたが、なぜか再度2次試験へと移行し、以前のようなテーマ型へと変更。難易度も大きく下がった。
ここ11年分(令和4年度分を除く)のテーマを簡単に分類すると、
⑴:時事問題系(医療関係)
「医療のIT化について、あなたの思うこと」(平成23年度)
「コロナ禍における医療崩壊を防ぐためにあなたが必要だと思うこと」(令和3年度)
⑵:時事問題系(知識前提)
「ストレスに対する予防のあり方」(平成29年度)
「医師のワークライフバランス」(平成30年度)
「わが国の再生医療について」(令和2年度)
⑶:高齢化社会系
「時代を見据えた理想の医師像」(平成26年度)
「高齢化社会における医師の役割」(平成27年度)
「在宅医療のあり方」(平成28年度)
⑷:医師としての資質(人間性)系
「人間として生きることの意味について」(平成25年度)
「医師として社会に貢献できること」(平成31年度)
⑸:医師としての自己の役割の俯瞰的理解系
「医科大学病院の理想像について」(平成24年度)
となっており、基本的には〈現在の地域の現状を踏まえた上で、臨床医としての自己の役割をどれほど自覚しているか〉〈現在の医療に対する興味関心を持ち、それと医師としての自己のあり方をどれほど結び付けて考えているか〉を大きな柱にしてテーマが組まれていることがわかる。これらを端的に受験生に問うたのが「医科大学病院の理想像について」(平成24年度)であり、その内実を分析してみると、
【医科大学病院の役割】
⑴:〈臨床〉を通して患者1人1人の治療活動を行う。
⑵:〈研究〉を通して現在の医療を進歩させ、多くの人々の健康に貢献する。
⑶:〈教育〉を通して良質な医師を輩出し、日本の医療の向上に貢献する。
となり、受験生はそうした環境の中に身を置いて何を学びどういう医師になるべきかを想像して記述を行うことが求められていると考えられる。
このように書くと、久留米大学は非常に難しいことを書かせようとしているという印象を持つかもしれないが、実際には自分の将来についてリアリティを持って考え、ビジョンをしっかり持っていれば大体合格点に近い論文は書ける仕様になっている。実際に平均点も40点前後と高めであり、採点基準は「甘め」であることが推測される。私なりの言い方だと、久留米大学は「本気で医師になりたい人」が欲しいだけなのだ、ということになる。
ちなみに出題は例年医学部長が行っている。また字が汚い場合はその時点で35点満点で処理するそうなので、どれほど内容がよくても平均点以下にしかならない。注意が必要である。字はきれいに越したことはない。 字の〈きれい/汚い〉は〈絶対評価〉ではなく〈相対評価〉なので、「自分なりにきれいに書いている」では不十分で「他人と同じくらいきれいに書いている」ことが重要となる。字がきれいに見えるコツは〈濃く/大きく/まっすぐに/下をそろえて〉書くことである。それで点をもらえるのだから、改める価値はあるだろうと思われる。
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