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【小論文解答】:2018年/福岡大学/医学部/本試験

 筆者の意味する「まともな」医者とは、自分が患者の気持ちを理解できないこと、自分が患者に対して無力であることを自覚し、謙虚な気持ちで患者に近づこうとする医者のことである、と私は理解した。私も基本的に筆者の考えに賛成である。患者が幸せであるための条件は、健康であること以外にも色々ある。しかし医師は彼らの人生に「健康」という観点からしか近づくことはできない。その点を履き違え、あたかも健康でありさえすれば幸せであるかのような一方的な目線で患者と接すれば、相手は自分のナラティブな生が一方的に踏みにじられたと考えるだろう。その意味で医師は謙虚でなければならない。
 しかし一方で、医師は医師の「職業倫理」に基づいて、患者の健康が患者の幸福に寄与するという信念を持ち、敢えて「分からない」という立場から患者に歩み寄ろうとすることも必要なのではないかと私は思う。患者の気持ちに寄り添うことが、単に患者の気持ちを分かっていると勘違いすることでは当然あってならないが、それと同時に患者の気持ちを全面的に受け入れることであってもならない。対等な関係とは、一方が他方を受け入れたり、両者が相手のことを極端に配慮することではなく、お互いがお互いの気持ちを伝え合う関係でなければならないし、そうでなければ信頼関係は生まれない、と私は考える。
 私がこの文章のような患者と向き合う際には、相手の人生、相手の気持ちに配慮しつつも、健康であってこそ幸せな瞬間もあるはずだ、そのためにできることをする、と誠実に言えるようになりたいと思う。(650字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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