医師は人の健康や生死に直接関与する、という職業の性質上、ライフよりもワークの方により大きな比重が置かれるのはある程度仕方がない、と私は思う。特に地方において住民の命綱となっている総合病院や開業医院は、時間外に助けを求める知らせがあれば、取り敢えず自分の生活よりも患者の方を優先せざるを得ないし、それを使命として当然のこととする考え方もある。しかし一方で患者のライフと同等の価値が医師のライフにもある以上、現在のワーク重視のアンバランスな状態を改善することも必要ではないかと思う。
またこのワーク重視の傾向が、逆に女性医師をワークから遠ざける原因となっている側面もある。女性医師が結婚や出産・子育てを契機として医師としての業務から離れることが良くある。それは一方で女性のライフの比重が大きくなっているのに、それに見合うワークの調整を行うシステムが整っていないため、実質的に医療の現場で仕事を続けることができなくなるからである。そしてこのことが慢性的な医師不足の一因となり、男性医師や残った女性医師のワークの負担を増大させる、という悪循環を招いているのである。
こうした悪循環を解消するには、女性医師が結婚や子育てと医師の仕事を両立させるためのシステム作りが重要である。勤務体制や休日の取り方に関する現状のシステムを見直すとともに、託児所や保育所といったハード面も改善・充実させていくことで女性医師の負担が減り、それが他の医師のワークライフバランスの改善につながることが期待できる。また男性医師も精神的・肉体的ゆとりができれば、これまで主として女性が担当していた家事や育児に積極的に関与しても良いし、そうしたライフの充実が仕事の充実をもたらすこともある。患者にとっても、精神的・肉体的ゆとりを持った医師に診てもらう方がメリットが大きい。その意味で医師のワークライフバランスは重要である、と私は考える。(793字)
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