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【小論文解答】:2017年/福岡大学/医学部/本試験

 筆者は課題文で、存在するものはすべてよきものであり、欠点ですら役に立つことがあるということを自己の体験に即して説明し、その上で「人間も社会もみんな不完全なものだという認識」が大事であると主張している。このことを踏まえると、下線部の筆者の主張は全く正しいと私は考える。「怪我の功名」という言葉が示すように、過失に見えることが良い結果をもたらすことがある以上、とにかく自分の思ったことをやってみることは大事であると思うし、一見無意味に思える他者の判断や行為を一律に否定することも避けるべきであると思う。捉え方を変え、立場を変えて対象を見直すことにより物事の価値は変化する。大切なのは、不完全なものを肯定的・多面的に捉え、その良い側面を積極的に評価し活用することで、みんなでより良いものを作り上げようとする気構えだと思われる。
 そしてこうした考え方は医療でも重視されるべきである。例えば治療法の選択において、医師の考える最善と患者の考える最善はしばしば異なる。またチーム医療においても、医師の考える最善と他の医療従事者の考える最善が異なることもある。そうした状況では、つい自分の判断が正しく相手の判断が間違っていると考え、自分の判断を押し通してしまいがちになる。しかし医療は基本的に「共同作業」であり、本当に行うべきことはそれぞれの最善の中間を漂っているのだと思う。こうした適切な判断ができるためには多様性に対する寛容さと自己相対化が必要である。将来医師を目指す者として、私もこれらの資質を身に付けるよう心がけたいと思う。(655字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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