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【小論文解答】:在宅医療のメリットとデメリット

 在宅医療のメリットは、患者が最後までナラティブな個人として自己の生を全うできることにある。患者は患者である前に一人の人間として、特定の場所と人間関係の中で自己の生を営んできた。それが高齢と病気のために自立した生活や通院が困難となり、病院の一室で残りの人生を過ごさなければならなくなる。これは患者にとって大変寂しいことであると私は思う。在宅医療が充実することにより、これまで病院でしか対応できなかった患者が、自宅で治療・ケアすることが可能になった。思い出の詰まった自分の家で、家族に囲まれて暮らすことができる。あるいは近所の友人と、気軽に言葉を交わすことができる。こうした幸せを味わいながら余生を過ごせるのは、在宅医療が充実したからである。
 一方、在宅医療のデメリットは、医療関係者がいつも身近にいないため、病状の急変に迅速に対応できないことである。特に在宅医療を望む患者は重症患者が大半なので、ふとした拍子に病状が悪化する可能性が高い。また在宅医療はそれを支える家族の負担が非常に大きいこともデメリットとなる。痰の吸引や薬の管理、食事・排泄・入浴の介助、病状の見守りなどを、家族は自分たちの生活を営みつつ同時並行で行わなければならない。これは相当な負担となる。さらに在宅医療は医師にとっても負担となる。在宅医療を可能にするためには、医師は各戸を定期的に往診しなければならない。しかも一人当たりに割く時間が増え、多くの患者を診察できない、というジレンマを抱え込むことになる。
こうした患者・家族・医師の負担を少しでも軽減させるため、自治体関係者・PT・OT・地域住民といった多くの人たちがチームを組み、互いに支え合いながら一人の患者のQOLを向上させる取り組みを行う必要がある。医師もまたこのチームの一員として、誰のための、何のための在宅医療なのかを肝に銘じて取り組むことが大切なのだと思う。(793字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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