AIとは大量の情報を迅速に処理する能力を持ったコンピューター機構で、人間の知能と同等の能力を持っているとされる。AIは現在医療の様々な分野での有効な活用が期待されている。例えばビッグデータに基づく医療水準の向上と地域格差の解消、センサーとタブレット画像による遠隔診療の実現、他業種とのデータ交換による包括的な医療ケアなといったことがAIの利点として挙げられる。これらは全てこれまでの地域医療の質を上げ、地域の人々がより充実した医療を享受できる、という点において大きな意味がある。
医療水準の地域格差が解消されれば、現在の日本における最高水準の医療を地方でも受けられるようになるし、遠隔医療が実現すれば、これまで医師不足でなかなか往診を受けられなかった地域でも、よりきめの細かい医療を提供できる。他業種とのデータ交換は、地方における在宅医療の質を大幅に向上させるだろう。従って地域医療にAIが導入されることは大変望ましいことであり、積極的に進めてゆく必要があると私には思われる。
しかしAIのメリットのみを重視し、より効率的に大量の患者を診察・治療するという点だけを地域医療が追求するようになっては問題である。AIがどれほど精密に患者を分析し、適切なアドバイスをしてくれるとしても、患者はやはり医師という「人間」に診てもらいたいという思いを捨てることはない。患者には尊厳があるし、その尊厳は「機械ではなく医師という人間が直接診察し、言葉を交わし、思いを交わす」ことで保たれるからである。「人間が人間を診る」という医療の根本は、これから先も変わることはないだろう。
地域の人々が医療におけるAIの導入を受け入れるかどうかは、医師の患者に対する心構え次第である。患者の尊厳を重視し、人間が人間を診るという医療を誠実に行う手段としてAIを取り入れるのであれば、地域医療はより充実したものになる、と私は思う。(795字)
- 関連記事
-
コメント