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【小論文解答】:2017年/愛知医科大学/医学部/2月2日分

 相談内容を拝見して、ひとつ思ったことがあります。それはあなたが色々なことをごちゃ混ぜにして悩んでいるのではないかということです。まずあなたが自分の心の病気をきっかけにして精神科を目指そうとしているのは素晴らしいことです。患者の気持を「体験者」として理解できることは、治療においてもメリットになります。そして医学部に入って「遺体を解剖」する時に死を思って恐怖することも確かにあるだろうと思われます。死は自分の意識や積み重ねた人生を奪い取る恐ろしい存在です。遺体とは、その死が現前していることに他なりません。それを自分の死と重ね合わせて恐怖するのだと思います。
 しかし、逆にこう考えることもできるのではないでしょうか。つまり「生きているからこそ、死ぬことができるのだ」と。あなたが訃報を聞いて恐怖するのは、人の死の部分にばかり目を向けているからであって、むしろその人が「生きていたという事実」に目を向け、その人生に思いを馳せる時、死という恐怖よりも生の重みと輝きが、よりくっきりと見えてくるのではないかと私は思うのです。医師という仕事は、患者一人一人の持つ生の重みと輝きを、医療行為を通して支える仕事です。生きることも死ぬことも、自ら望んだことではありません。だからこそ人はその理不尽さの意味を問い、生を輝かせることで死を意味づけようとするのです。あなたもまたその一人であって欲しい、と私は思います。(597字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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