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【小論文解答】:2012年/金沢医科大学/医学部/本試験

■1月30日分

 我々は一見不幸と思える中に喜びが生まれることを想像できない。しかし不幸の中でも、自分の気持ちをわかってもらえたり、自分の成長を感じたり、人の中で役に立つ過程の中で喜びを得て生命の質を高めることができる。健康観で言うならば、延命主義的な健康観は物質的な飢えに基づく競争や暴力を引き起こし、人類社会の滅亡の背景となっている。他方、生命の質を重視する健康観は心の飢えに基づき、人生の過程を充足させることを目的とし、新しい世代に支持されている。エイズについても、正しい知識と愛し愛される気持ち自分を信じる気持ちが持てれば本質的には大きく拡大しない。エイズ予防にはそうした新たな文明秩序が要求されているのである。(300字)

■1月31日分

 日本は19世紀後半から急速に工業化した。殖産興業の中心的役割を担ったのは紡績であり、その発展を支えたのは農村出身の労働者や女工の安価な労働力だった。労働者は長時間の苛酷な労働を強いられ満足な賃金も得られなかった。また工場内の環境は結核菌の増殖には好都合であり、女工の多くが結核を発症した。彼女たちは病気で解雇された後郷里に結核菌を持ち帰り蔓延させた。やがて重工業の発展により男子工員にも結核が入り込んだ。さらに徴兵制度によって兵舎に集められた若者の集団感染、除隊後の帰郷といった悪循環により結核は全国に浸透して行った。こうして敗戦に至るまで、富国強兵策の中で日本は「結核大国」となっていったのである。(300字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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