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【小論文解答】:2013年/九州歯科大学/歯学部/AO入試

 歯科医療人を目指すにあたって、初対面の患者さんから信頼を得たり、チーム医療に参加したりする上で必要とされる「聞く力」とは、まず相手の持つ尊厳を重視し、対等な存在として謙虚な気持ちを持つことによって培われるものである、と私は考える。確かに歯科医療において主導権を握るのは歯科医師であるが、それは自分が特別な地位や身分を持っているということではなく、重い責任や自覚を必要とするということを意味する。
患者は単に歯に疾患を抱える無個性な存在として歯科に来ているわけではなく、かけがえのない人生を送っている固有の存在であり、尊厳を有している。そうした患者が歯に問題を抱えて歯科に来ている。その痛みや苦しみ、辛さに対する共感の気持ちをきちんと表し、積極的に患者自身に話すことを促すことで、初対面の患者は自分の思いを話しやすくなると思う。そして患者の話は基本的に途中で遮らず、最後まで聞こうとすることも重要である。医療的な知識があると、その見地から相手の話を途中で遮って解決を急ごうとするが、患者が大事にしているのは自分が歯に問題を抱えた一人の人間としてきちんと扱われている、ということなのである。患者が尊厳を持った存在である、という心構えを持っていれば、その言葉を最後まで聞こうという姿勢が自然と身につくのではないかと思う。
チーム医療に参加している他のスタッフについても同じである。彼らはそれぞれの分野のスペシャリストとして、チームの中で重要な役割を果たす存在である。彼らの仕事に対して敬意を払い、対等な関係で向き合う気持ちを持つことが、歯科医師にとってはまず重要となる。その上で「全身の健康を促進する」という共通の目的のもとに、自分の役割と他のスタッフとの役割との繋がりを意識しつつ、自分の知らないことを相手に教えてもらうという謙虚な姿勢で向き合うように心がければ、自然と「聞く力」が身につくと考える。(795字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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