住民の健康の保持・増進に対して、歯科医療人は患者一人一人と全人的に向き合うと同時に、自分の行為が国家にとって意味あるものであることを意識しつつ、相互に連携を図りながら取り組んでいくべきである、と私は考える。まずWHO憲章にもあるように、「健康とは、肉体的・精神的及び社会的に完全に良好な状態」であるとするならば、口腔という部分に関わる歯科医療人の医療の目的もまたこの状態を実現することにあると言える。
つまりそれは「歯と身体と社会に生きる個人の人生」が密接に関係することを歯科医療人が自覚し、その連関の中で自分の医療行為を捉えつつ治療にあたることを意味する。
そして歯科医療人の医療行為のこうした広がりを踏まえた上で、一人一人の幸福を国家単位で全ての人に実現することが国家のためにもなる、というWHO憲章の考えを重ね合わせると、歯科医療人はこうした大きな目的を担う存在として、一人一人が自覚をもって地域住民と向き合い、その健康の保持と増進に貢献すべきである、ということになる。
歯科医療人として関わる地域の人全てが平等に健康を享受できるために、向上心を持って知識を学び、技術を磨き、様々な分野の人々と連携しながら治療行為・啓発活動という形で働きかけを行うことが重要なのである。歯科医療人がそれぞれの持ち場でこうした姿勢で歯科医療に向き合えば、結果として国単位での住民の健康を実現することになる。
また国家の側も、歯と全身の健康とのつながりについて、広報活動や啓発活動を行うことで国民全体に知識を広め、虫歯の予防に努めるとともに、口腔の健康維持や治療活動を円滑に行えるように制度の側からのサポートを行うことが望ましい。そうした国家の側からのサポートと歯科医師一人一人の自覚と努力の相乗効果により、国民一人一人の健康が守られるのである。そうした自覚をもって私も歯科医師として努力を重ねて行こうと思う。(790字)
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