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【小論文解答】:2015年/順天堂大学/医学部/センター

 私が海辺に腰掛けて思う事は、今自分が抱えている悩み事である。その悩みは家族や友人に相談できないことで、自分の人生に関わるどうしようもないことである。すぐには解決できない、しかし解決しなければならない。自分の過去を反省し、未来に不安を感じながら、現在と向き合わなければならない。その苦しみや憂鬱を、あるいは人生に少し疲れてしまった悲しい思いを、海に向かって心の中でぼやいている自分の姿が想像できる。
 もちろん、海はそうした私にアドバイスをくれるわけではない。しかし絶え間なく打ち寄せては引いていく波のリズムと、何より海の大きさそのものが、ちっぽけな私を包み込んでいつの間にか微かな癒しと元気とを与えてくれる。そして私は立ち上がり、また現実に戻って行く。「海は海辺に腰掛ける全ての人のものである」という詩の言葉は、そこにあるだけで心を鎮め癒してくれる海の優しさや思いやりを、私に思い起こさせるのである。
 そしてこの言葉は、「医師は海であれ」というメッセージを私に伝えているように思う。患者は心と身体に大きな荷物を背負って医師の下にやって来る。医師は海のように、まずは何も言わずに患者の苦しみに耳を傾け、寄り添うことが必要なのである。そして波のように柔らかい声と態度で、患者の苦しみを少しずつ削り取っていく。波が海辺の砂を少しずつ削り取るように。未来の私も、患者にとって海のような存在でありたいと思う。(591字)

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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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