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【小論文解答】:2013年/順天堂大学/医学部/本試験

 深い霧の立ち込めた谷間から、なだらかな丘の頂上が所々で顔を覗かせている風景を背後にして、やや草深い丘の上の草原から2頭の子馬が後方の谷を振り返るようにたたずんでいる姿は、自分たちの背後にある大きな未来が霧に包まれていてよく見えないという不安を表しているように私には見える。しかし山間に霧が立ち込めるのは、夜が白々と明けて朝日が昇る直前の頃が多い。子馬たちの周りにいるはずの親馬の姿はこの絵では見当たらない。2頭の子馬は、それまで長い夜の闇の中に2頭だけで居たに違いない。そう考えれば、2頭の不安は夜よりもいくらか軽減されているのかもしれない。これから朝日が昇り、霧が晴れてくることで見えてくる丘の下の部分に、2頭の子馬はじっと目を凝らしているようである。霧が晴れたら、2頭の子馬は谷へと降りてゆくのだろう。それまでの一瞬の緊張とかすかな不安とを、この絵の静寂は語っているのではないかと私には思われる。
 この絵を見て思ったのは、これは医師と患者の病気に向き合う姿勢に似ている、ということである。患者にとって病気は夜の闇である。時には自己の生存を脅かすような病気に対する患者の不安は、闇夜に佇む子馬の心情と同じであろう。そしてその病気と闘う医師もまた、大きな不安を抱えている。病気の原因が分からなかったり、治療が難しい病気と向き合う場合には、医師もやはり大きな不安に襲われるだろう。どうすればよいのだろうか、治せるのだろうか、と苦しむこともあるだろう。しかし夜の闇は夜明けの光によって、やがて駆逐されるはずである。患者と医師が共に病気に向き合い、一生懸命に努力を続けることによって、困難を克服するための道筋が見えてくる。その時、医師は「親馬」ではなく、患者と同じ「子馬」であることに意味があるのだ、と私には思える。患者と医師が同じ目標に向かってじっと目を凝らす静寂が、私にはこの絵に重なって見えるのである。(798字)

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玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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