まず「競争社会」は私たちにとって多くのメリットをもたらすと私は考える。なぜなら競争は社会の各個人の資質や技術の向上をもたらすとともに、社会全体の生活の質を向上させるからである。例えば人間のゲノム情報の解析に関して、過去激しい競争があった。それは解析を行うことにより特許を取り利益を得られるという商業的な目的に基づくものであったが、結果としてゲノムの解析は加速度的に進み、そこから新たな遺伝子治療への道や病気の治療の指針が多く生み出され、世界中の人々の健康に貢献することになった。その意味で「競争社会」であることを肯定的に捉えることは間違っていないと思う。
一方で「競争社会」は多くのデメリットももたらす。典型的なものは「格差の発生と固定化」である。競争は必ず勝者と敗者を生み、恩恵は基本的に勝者にのみもたらされる。受験や就職、スポーツといった身近な例を考えても、勝者と敗者のその後の恩恵の差は歴然としている。それは個人の力量の差として考えれば仕方のないことなのかもしれないが、その差が固定化され、特定の職業や地域、家族全体に不利益を及ぼすことは良くないことである。完全な平等を実現することはできないが、発生した格差を縮小する努力を行うことも、同じ社会に生きる人間の「共存共生」を目指すという点では非常に重要である。
より大きな視点で考えれば、望ましい競争とは、むしろ社会の格差を縮小するために行われるものではないかと私は思う。できるだけ多くの人々が幸せな生活を送れるために、知恵を集め技術を競う。例えば医療の地域格差を縮小するためにITを活用し地方の患者の健康を守ることや、発達障害の人が社会の中で活躍できる企業のシステムを考える、といったことを競争を通じて実現することには大きな価値がある。私も将来医師として、他の医師との競争を通じて社会全体の「共存共生」に大いに貢献していきたいと考えている。(793字)
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