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【小論文解答】:2010年/昭和大学/医学部/2月07日分

 我が国において宗教が果たすべき役割があるとすれば、それは人の一生を価値あるものとする支えとなることだと私は考える。それは「己を律する」という厳格なものではなく、「自分らしく生きる」ための支えである。人は尊厳を持った一個人として、物語られる生、ナラティブな生を生きる。そして最後まで自分らしい生を全うしようと思いながら日々を暮らしている。しかし人生はままならないことが多く、自分らしさを保つのは難しい。特に不可逆的に病気が進行して末期状態になると、家族や医療従事者に迷惑をかけるという思いもあり、自分の望まない最後を粛々と迎えてしまう事態も発生する。そんな時に宗教は「最後まで自分らしくあること」を肯定する唯一の支えとなるべきなのだ、と私は思う。
 もちろん、本人だけが自分らしさを追求しても、周りがそれを受け入れなければ、人は納得ゆく生を全うすることはできない。上に述べた末期の患者であれば、その人生の価値を理解し尊重するという「宗教観」を医療従事者が共有し、その価値を実現するために尽力しなければ、宗教は果たすべき役割を果たせないのである。現在進んでいる高齢化がさらに進むと、このことはまさに日本の国家全体で考えるべき問題となる。その最前線で生身の患者と向き合う医師は、この宗教の役割を自分の役割とし、患者の生を最後まで支える宗教の代理人として、患者と向き合うことが求められているのだ、と私は結論付ける。(597字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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