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【小論文解答】:2010年/日本医科大学/医学部/本試験

 学生の資質の発見とその育成は医療全体の質の向上にとって必須である。医療が自己の限界を一歩ずつ乗り越え、より多くの人を苦しみから解放するためには、研究の充実が欠かせない。また患者のQOLを重視し、ホスピタリティに溢れた医療を行える医師も、これまで以上に必要になってくる。教育を通して学生時代に積極的に研究・臨床の場に参加させることは、専門性の高い医師の資質の発見と能力の向上に欠かせないことである。その意味で教育は研究・臨床それぞれの専門性を高めるという大きな役割を果たしている。
 一方で筆者は「研究を経験した方が優秀な医師になると思う」とも述べている。これは研究を通して得た批判的・客観的な物の見方が臨床でも活かされる事を意味している。研究と臨床に共通しているのは「物事を定型的にではなく、個別的に検証してゆく」という姿勢である。一見同じと思える物の微妙な差異に注目し、新しい何かを見いだすというあり方は、研究でも臨床でも必要とされる姿勢である。研究者はそこから医療という大きなレベルで新しい治療法を見出し、臨床医はそこから固有な患者に最も適した具体的な治療法を見出す。つまり「優秀な医師」とは研究的な資質と臨床的な資質を兼ね備えた存在なのである。従って、学生の医師としての研究性と臨床性の両方を教育が同時に伸ばすことにより、医師の個人の能力と医療全体の質の向上を実現させることになる、と私は考える。(597字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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