医療と介護の連携は、高齢化の進む地域医療において最も重要な課題である。元気なうちは諸交通機関を利用したり自分で車を運転したりして通院することも可能であるが、高齢になり体が弱ってくると通院して治療を受けることが困難になる。さらに寝たきりになってしまうと他者の力を借りても病院に行くことが不可能になる。そうした患者のために、地域では開業医を中心として往診活動、すなわち在宅医療を行っている。その意味で在宅医療は、地域で生きる高齢者にとって最後まで充実した人生を送るための命綱である。
しかしそうした高齢者の充実した人生は、医療活動によってのみ保たれるわけではない。彼らの日常生活のサポートを行う家族や介護関係者とうまく連携することによって、初めて在宅医療を受ける高齢者のQOLは保たれるのである。例えば食事や入浴や排泄のサポート、調理や洗濯等の生活援助、身体の機能を回復させるためのリハビリ等を通して、家族や介護関係者は在宅の高齢者と密接なつながりを持っている。家族や介護関係者が生活面で高齢者を支え、医療者が健康面で高齢者を支える。この両面がうまく噛み合うことで、高齢者は安心して自宅で過ごしながら自分らしい人生を送ることができるのである。
こうしたことを踏まえ、医療者は「治療者」という立場からのみ自分の役割を考えるのではなく、高齢者を支える多くの支援システムの一部として自らの役割を再構成する必要がある。医療者はこれまで以上に家族や介護関係者と緊密に連絡を取り合い、自己が医療活動を通して得た知見を家族や介護関係者に還元し、家族や介護関係者から得た情報を医療活動に還元するという形で、高齢者のナラティブな生全体に寄与できるよう、努力を行う必要がある。将来医療人となる私自身も例外ではない。「高齢者を包括的に支援するために自分に出来ること」を常に考えながら、良き医療人となれるよう努力を重ねてゆきたい。(792字)
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