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【小論文解答】:2012年/日本大学/医学部/本試験

 「プライオリティー・リスト」を作らずとも「今一番やりたいこと」ができるのは、自己の存在価値が「他者の幸福」の実現にあることを、各人が潜在的に理解しているからである、と私は考える。筆者は本文の中で、あえて苦痛を伴う選択を自分の「やりたいこと」として行っている人の例を挙げ、自分の気持ちに正直にいれば「やるべきこと」に迷ったり悩んだりしなくて済む、と述べている。確かに大震災の折や患者の急変時に「自分のやりたいこと」を「自分のやるべきこと」として率先して実践する多くの人々がいる。彼らにあるのは「困っている人、苦しんでいる人を助けたい」という思いだけだろう。彼らは利他的に振る舞うことが人間として価値を持つという認識を持ち、実際に人の役に立つことで自分の人間としての価値を自分で肯定する機会を得る。つまり彼らは利他的行為によって自己と他者とを同時に救っているのである。その意味で筆者の見解は正しい。
 しかし逆に言えば、特別なことなどない日常の中では「やりたいこと」や「やるべきこと」が分かりにくい、ということでもある。私自身の事を顧みても、特別なことがなければ自分の「やりたいこと」として目の前にある宿題よりも筆者の言う「功利主義」的な快楽を選択することもある。「プライオリティー・リスト」はそのような自己自身を振り返り、人間として自己がどうあるべきかを振り返る良い機会を設けるきっかけとして捉えることもできる。限りある人生の中で自分がやるべきことは、やはり人の為に役立てるように自分の能力を向上させること、つまり宿題を優先することである、ということをリストの作成によって再確認するのである。人間は、筆者の考えるように常に緊急時と向き合っているわけではないし、自堕落な気持ちがないわけではない。そうした「人間らしい」あり方の中で、「プライオリティー・リスト」の作成にも相応の意味があるのだ、と私は思う。(793字)
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玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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