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 【小論文解答】:2015年/川崎医科大学/医学部/本試験

(問1)
少子高齢化社会の到来で高齢患者の絶対数が急激に増加し、医師不足下での診察・治療の際の医師の労働条件が悪化した。また地方では病院数の減少で残った病院の業務の過酷さが著しくなり、それを原因として離職する医師や地域医療を避ける新人医師の増加により地域医療の質が大幅に低下した。一方で社会の側からの医療のモラルや医療費抑制に対する要求も厳しくなり、信頼関係に基づく健全な医療の継続が困難になった、というもの。 (200字)

(問2)
 ヒトが必ず死ぬ存在であることを根拠に治療の有効性を旗印とする医療に限界があると主張する筆者に対し、私は一部共感できるが、一方でそうではないという思いもある。たしかに社会が医療が万能性を過信し、それが実現できないことに対して不満を持つような状態は、医療従事者にとっても社会にとっても良いことではない。医師と社会が医療の有限性を共有し、そうした制約の中でそれぞれができることについて考え、実践することは、これからもっと必要になってくるだろう。例えば社会の側では予防医学的発想に基づく自己管理の徹底、医師の側では完治や回復を前提とした医療から維持・緩和を前提としたケアの充実によるQOLやNBMを重視する医療へのシフトチェンジがそれにあたると思う。
 しかし、医師の仕事が患者の生命や健康を守り、幸福な人生に貢献するという使命をもっていることは、これまでもそしてこれからも変わりはない。先人が続けてきた、ヒトを病気から救う営みを、医療従事者はこれからも続けてゆく必要がある。「死ぬ」という事実の前には「生きる」という現実がある。医師は患者の「生きる」側面を支えるための拠り所として、これからも有限性に挑戦してゆくことを旗印としてゆくことには大きな意味がある。そしてこうした有限性の自覚と有限性への挑戦を両輪として使命を果たす意欲を示すことが、最終的に医療の信頼を取り戻すための唯一の方法である、と私は結論付ける。(597字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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