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【小論文解答】:患者に寄り添う医療とは?

 患者に寄り添う医療とは、患者の固有性をきちんと理解した上で、患者の人生の質を高めることができるような医療のことを指す、と私は考える。なぜなら医療の目的は患者の病気や怪我を治すことにあるが、患者の病気や怪我を治すことの目的は、患者が社会の中で幸福に人生を送ってもらうことにあるからである。患者は、医師と向かい合っている時には「病気や怪我を負った一個人」であるが、それ以外の時には社会の中で一定の役割と価値を持って生きている「取り替えの聞かない誰か」である。医師は「病気や怪我を治す」「命を少しでも延ばす」という観点から最も合理的な形で治療を進めようとするかもしれないが、それは患者自身の社会的な役割や人生観と必ずしも合致しないこともある。
 そうした場合、医師は患者のナラティブな側面を十分に理解し、患者の人生の質を大事にしながら治療を進める必要がある。例えば病気の治療には入院が必要であると思われる男性の高齢者がいても、その男性が車を運転しなければ病院に行けない妻がいるなら、男性の入院は適切な対処とは言えなくなる。その場合に医師の側は入院以外の方法で男性の病気を最大限に回復させるための方法を考え、提案し、実行してゆくことが必要となる。
もちろん、そうした対象が可能となるためには、医師の側が患者の話をきちんと聞き、相手の状況を理解した上で問題解決のための努力を行う、という自覚が何より大事である。そしてその自覚は「患者の幸福に奉仕する」という医師の使命への自覚を前提として成立する。
 こうした医療のあり方は、地域医療においてはさらに重要となる。患者はそれぞれの人生の大きな営みの一部として、病気や怪我を抱えて生きている。病気や怪我の方ばかりに集中して、彼らの地域での人生の営みを損なうことが無いよう、医師は彼らの声や思いに耳と心を傾け、地域社会の中で幸せに暮らせるための医療を目指してゆく必要があるのだ。(795字)


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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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