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【小論文解答】:2009年/日本医科大学/医学部/本試験/医師→患者ver.

  「医療における偏見」と聞いて思い浮かべるのは、医師から患者への偏見である。医師は通常患者を「治療対象」としてのみ考えがちである。そこから患者はとにかく自分の病気や怪我が回復すればそれで良いのだと思ってしまう。だが患者は単に自分の病気や怪我が回復すれば良いと思っているわけではない。自分の抱える病気や怪我についての不安を聞いてほしいと思うこともあるし、病気や怪我の状態や経過の状況を詳しく聞くことで安心・納得したいと思うこともある。さらに治療方針について自分なりの要望を述べたいと思っている患者もいるだろう。そうした多様性を持った患者に対して、一律に「治療対象」としてのみ接するなら、患者は医師に対して不信感を抱き、医療本来の目的である病気や怪我の回復に支障をきたす恐れもある。医師は患者を固有性を持った「ナラティブ」な存在とみなし、人間としての対等性を十分に理解しながら丁寧な対応を心がける必要がある。
 また、医師は患者に対して「厳しく言えば言うことを聞いてくれるだろう」あるいは「自分がどんなに言っても言うことを聞いてくれないだろう」と一方的に決め付けるようなこともあってはならない。人間は相手次第で自分の態度を変えることもある。それを信じて患者の話をきちんと聞き、それぞれの事情をよく理解した上で、患者が治療に前向きに取り組むよう真摯な態度で治療に臨む必要があるし、それも医療の重要な役割であると思う。(598字)

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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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