同じ扱いを受けても自由度が大きいという認識を与えられた高齢者介護施設の入居者の方が健康状態が向上し、死亡率が低下する、という文章を読んで私は衝撃を受けた。私たちは通常、人間の健康の度合いや死亡率を左右するのは「治療の中身やサポートの質、設備の良し悪し」という技術やシステムや設備次第であると思っている。高度で良質の治療を受け、快適な環境で手厚いサポートを受けた方が健康にも寿命にも効果があるはずだと考えるのである。しかしこの文章は、人間の健康や死亡率は「自分がどのような存在として扱われるのか」という精神的な側面が大きく左右していることを示唆しているのである。
個人が自己決定権を保障されるということは、その個人の生きる意味を強く支える要素である。子供が社会の中で一人前と見なされる条件は、その子供に自己決定権が多く認められるということである。それと同様に、病気の人や高齢者といった弱者も、社会の中で特別扱いされるのではなく、他の人と同じ一個人としてその尊厳を認められ、固有性を尊重されることによって、自分の生を肯定的に受け止め、前向きに生きられるのではないかと思う。そうした気持ちの張りや自己肯定感が、健康や寿命に大きな影響を与えるのだ。
こうした認識は、将来医師となる自分自身にとって非常に重要である。患者の健康と命を守ることを職業とする医師は、単に治療や技術面の向上だけではなく、患者の精神面についても十分に配慮することが求められる。その意味で、この事例は私の胸に深く刻んで置かなければならない、と私は考えた。(654字)
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