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【小論文解答】:2015年/順天堂大学/医学部/本試験

 丸くて薄暗いピンク色の地下鉄の通路は、人の体内を思わせる。その通路の階段を上っているコート姿の男は、患者の体内を調べ、病気を治療しようとしている医師のように思える。手すりは治療に必要な知識や技術だろう。医師は医療知識や技術を支えにしながら、患者の病気や怪我を調べ、回復のための手がかりを得ようとして奥へ奥へと入っていく。一歩一歩階段を踏みしめながら登っていく医師の姿は、患者の身体的問題を見極め、治療のための手がかりを得ようとしている誠実さを感じさせるように、私には感じられる。
 一方で、写真の手前の方には、赤い風船が2つ、手すりに引っ掛けられている。男は風船に気が付かなかったのか、それとも気が付いているがそのまま無視したのか、風船を手にすることなく、風船のある側とは反対側を通り過ぎていったかのように見える。階段を上る過程を治療の過程と捉えるなら、この風船は「対話」の象徴であるように私には思える。風船が2つであるのは、対話は2人で行うものだからである。医師と患者との間のコミュニケーションによって得られる治療のためのヒントもあるはずなのに、この男、すなわち医師はそれに気づかず、あるいは無視して、そのまま患者の体だけを見つめて治療を進めている、というのがこの写真の意味するところではないか、と私には感じられる。
 患者をナラティブな存在であると考えると、治療に際しては「対話」を通して患者の社会的背景や人生観、そして何より患者の不安や苦しみといった思いと向き合うことは欠かせない。そうした側面を見失った医療は、患者そのものの幸福や精神的満足をもたらさない可能性がある。この写真は、将来医師となる私に「2つの風船を忘れるな」と伝えているように思われる。もちろん、良い医師となるためには十分な知識や技術は必要である。しかし「2つの風船」を手にして上る心の余裕を持って患者と接していきたいと考えた。(792字)
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プロフィール

玄武庵

Author:玄武庵
予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)・Z会(実戦模試)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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