日本で少子化が進行した原因は大きく2つある。1つは女性の社会進出による晩婚化である。女性が男性と同様に社会の中で労働力としての価値を持ち始めるとともに、女性も社会の中で仕事を通して自己実現することを人生の目的とするようになった。したがって仕事のスキルを最も磨かなければならない時期が結婚や出産の時期と重なった時に、仕事の方を優先し、結婚や出産、子育てを後回しにするようになっていったのである。
もう1つは若い世代の生活にゆとりがなくなってきたことである。この20年、不景気のあおりを受けて若い世代の非正規労働者が増えたり、正規労働者でも十分な収入が得られなかったりしてきた。そうした状況で子育てをしようと思っても、年間50万円といわれる子育ての費用を捻出することが困難になっており、結果としてたとえ結婚したとしても容易に子どもを産み育てることに慎重にならざるを得ない状況になっていったのである。
少子化は個人に老後への不安をもたらす。老後に頼るべき存在が少なければ、それを見越して早くから貯蓄をする傾向が加速する。それが子育て費用の抑制につながり、さらに少子化が進む、という悪循環が生じる。また社会に対しては、長期的な人口の減少および労働者人口の減少による税収の減少から社会活動の規模そのものが縮小し、国力の低下や財政の破綻、さらに地域の過疎化や地方自体の崩壊をきたす、という深刻な影響が生じる。
そこで日本の社会はまず、若い世代が育児と仕事とを両立できるようなシステムを充実させる必要がある。例えば育児休暇の徹底や会社の託児所の設置の義務化を進めてゆくことが重要となる。また育児に対する金銭的なサポートも、さらに充実させていかなければならない。同時に予防医学的対策で高齢者の健康を維持し、医療費の抑制と定年年齢の引き上げによって税収を確保し、それを積極的に子育ての支援のために用いる必要がある。(789字)
- 関連記事
-
コメント