ひとり暮らしの高齢者が増加した理由として考えられるのは、平均寿命の男女差によって夫に先立たれた高齢の女性が増加していること、離婚や未婚といった事情でひとりになった人が高齢化してきていること、周りに面倒を見る子供がいないことなどが挙げられる。こうした高齢者は、自分で望んだにせよ望まなかったにせよ、身体的・精神的・経済的不安を抱えながら、自立しつつ社会の中で生き続けることを望んでいると思われる。
ひとり暮らしが不利となるのは、特に身体的な面においてである。高齢である以上、身体的な疾患を抱えていたり、突然病気や怪我を負ったりすることは大いにありうる。その時に周りにすぐに気付いてくれる人や病院に連れて行ってくれる人がいないので、重症化したり、亡くなってしまうリスクが高くなる。そうした不安を軽減するために、医師や介護関係者、行政などが一体となって、健康をサポートするシステムを作ることが重要だ。
一番大事なことは、ひとり暮らしの高齢者との接触の機会を増やし、健康を見守ることである。自分で定期的に病院に来てくれる患者がひとり暮らしの高齢者であれば、通常の患者よりもより注意深く日常生活などについても細かく聞きながらアドバイスを行うことが必要である。来院できない患者に対しては、地域の医師同士がチームを組んで、頻繁に往診できるよう、協力し合ってひとり暮らしの高齢者の健康を支えてゆくことが大切だ。
それに加えて、医師は介護関係者や自治体の民生委員、ひとり暮らしの高齢者の周囲の人々と協力し合って、日常生活の様々な場面で接触や気遣いを行ってもらい、体調に異変があったらすぐに知らせてもらうように連絡網を構築する必要がある。一人暮らしであっても、最後まで自分らしい生活が送れるように、地域全体が見守ってゆけるようなシステムの要として、医師にはこれまで以上に重要な役割が期待されている、と私は考える。(790字)
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