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【小論文解答】:2014年/昭和大学/医学部/本試験/2月9日分

 医学の進歩が人々の健康の向上と平均寿命の延長に大きく貢献してきたにもかかわらず、医療が信頼をなくした理由は、医療従事者が医療行為の当事者である「患者」自体に目を向けず、「患部や病態」という物質的な側面ばかりに目を向け、それをいかに合理的・効率的に治療するかという点に重きをおいて患者と接していることが患者に分かるからである。
 患者とは、固有の人生を送ってきたナラティブな主体であり、相応の尊厳を有した存在である。病気にかかったり、怪我をした患者は、自分の「この病気や怪我」を治してもらうために病院を訪れ、時には命を預ける。ところが病院では病気や怪我が「データ」として分析され、「治療のためのサンプル」のような扱いを受け、患者から遠ざけられる。そして患者は、自己の尊厳に対する配慮や、痛みや苦しみに対する共感、といった人間としての気遣いを、医師や医療従事者から感じないことで、自分は一人の人間として扱われていない、といった思いを抱き、それが信頼の喪失や非難へとつながっているのだと私は思う。
 医学が進歩することは確かに喜ばしいことである。しかしその進歩があくまでも「患者のためのもの」である、という医療の本質を医療従事者は忘れてはならない。この人に命を永らえてもらいたい、幸せになってもらいたい、という気持ちを持って患者と向き合い、患者の言葉や思いに耳を傾けながら、技術を駆使することが必要なのだ、と私は考える。(596字)
                                           
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Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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