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【小論文解答】:医師の地域偏在について(2014年/近畿大学/医学部/推薦試験)

 医師が都市に集中し、過疎地に少ない地域偏在が生じた原因は、過疎化による人口減少を上回る病院数の減少により、医師の負担が格段に増えたことが考えられる。これまで地域の医療を支えていた開業医が高齢化により廃院する割合が多くなると、過疎地の患者はその地域の中核病院に集中するようになるが、それが勤務医の急激な負担増を招く。若い医師はそうした苛酷な勤務を嫌い、利便性の問題もあって都市への勤務を優先し、過疎地の勤務医も負担増に耐えられずに都市の方に移動してゆく、という悪循環が起こっている。
 この地域偏在への対策としては、まず地域の医師数を増加させる制度を確立することが挙げられる。現在医学部では地域医療を重視する学生を積極的に入学させているが、この枠を広げて地域医療を担う若手を確保することが最も必要である。それとともに、こうした若手の医師を大学が積極的にサポートし負担を減らすことも重要となる、私は考える。
 また外科、救急科、産科等のリスクの高い診療科が敬遠される診療科偏在が生じた原因としては、こうしたリスクの高さや過剰労働に見合わない医療活動を敬遠する医師たちの増加が挙げられる。全力で治療活動に当たっても、それを医療ミスと見なされたり訴訟を起こされたりする割合が増えれば、医師は自分の仕事に遣り甲斐を感じられなくなるし、それを見ている若い医師も、好んでそうした科に入りたいとは思わなくなるのである。
 この診療科偏在への対策としては、まずリスクを軽減するための保障システムを確立することが挙げられる。トラブルが発生した時に医師を守る制度が整備されれば、医師は安心して治療を行うことが出来る。またリスクの多寡を基準として、こうした科の医師を金銭的にも優遇するような仕組みも必要である。こういったシステムの構築により科の魅力を増大させ、就業者を増やして負担を減らすことでよい循環が生まれる、と私は考える。(793字)

※設問文では「地域偏在」と「診療科偏在」のいずれかで400字の設定であったが、この論文では両者をまとめて800字以内の論文として作成した。
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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