私立医学部の面接の目的は「医療人の資質を確認する」ことに他ならないが、資質といっても色々あることについては、【医系小論文の書き方】の項ですでに述べている。また「人間性を確認すること」と考えたところで、人間性にも色々あることについても、別の箇所(例:藤田保健衛生大学医学部小論文の廃止について)の項ですでに触れている。
ここではもっと端的に「何が知りたいか」と「何が見たいか」とに分けて、それぞれ思い当たる節を箇条書きで述べてみる。
〈何が知りたいか〉
○医師の志望理由(当事者として本気で考えているか)
○大学の志望理由(この大学のことを知っているか。知らずに来ているといった無礼なやつではないか)
○人生に対する前向きさ(何事にも積極的に取り組んだ形跡があるか)
○コミュニケーション能力(話を聞き、理解し、論理的かつ社交的に受け答えができるか)
○従順さ・素直さ(ひねくれた思考をしていないか。大学に入って先輩や教師の言うことを聞きそうか)
○好奇心(興味を持って身の回りのことを知ろうとしているか)
○思いやり(他者の立場に立てるか。自己中心的ではないか)
〈何が見たいか〉
○明るさ(明るい人間か)
○元気さ(元気であるか)
○礼儀正しさ(他者に対して礼儀をわきまえているか)
○清潔さ(公の場での自己の身だしなみに気を使えるか)
○サービス精神(自分から会話を盛り上げる意思があるか)
○忍耐力・精神力(多少困難な状況に対する耐性があるか)
といったところである。これは要するに「普通の人間であるか」ということとほとんど同じことなのであるが、将来医療人になる人間は、こうした要素を他の人間より若干多めに持っていなければならない、と面接官は考えているのである。もちろん、上記に挙げた要素をすべて備えた人間など、一握りもいないだろうし、これを書いている私自身も「欠陥品」なので、こうした要素を持ち合わせているとは言い難い。おそらく上記の要素のうちの「半分程度」を他者より持っていると判断されるなら、おおむね合格になるだろう、と考えられる。ただし、上記の要素の二つ以上を著しく欠いている、という評価が下されれば、その人は不合格になる可能性がある、と私は推測する。
医学部の面接は、基本的に「
体育会系」である。これは絶対に肝に銘じておかなければならない。どんなにマナーや言葉遣いがしっかりしていても、元気でハキハキした人間でなければ、評価の対象にはならない。何故なら医学部および医者の世界が、基本的に体育会系だからである。高度な知識や人間性は、本や座学といった「文字の世界」だけを学んでも、実は身に付かない。先輩や教授といった「上の人間」との徒弟関係の中で厳しく叩き込まれることによって、はじめて知識も人間性も身に付くのである。だから医学部に入ってくる人間は、まず「好かれる後輩」としての資質を持っていなければならない。
面接官は「この子が大学に入って、教える→教わるの関係をうまく築けるだろうか」という観点で面接相手を見ている。人間に対する価値観を共有し、「教わる相手=下っぱ」として、きちんと言うことをきいてくれるかどうか、ということが、面接官にとっては大事なのである。
「患者をちゃんと治せれば、そんなことは関係ないのではないか」と思う人もいるかもしれないが、患者もまた「人」であり、相手が人間的に嫌だったら、どんなに治療がうまかろうがその人から離れていく。良い医師になるためには、まず患者から好かれなければならない。その準備段階として、まずは面接官、そしてその先に見えている先輩や教授たちに、まずは好かれなければならない。面接の対象者がそうした人間であるかどうかを確かめるために、医学部の面接はあるのだ、と私は考えている。
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