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【小論文解答】:「格差」をどこまで認めるか?(2008年度/関西医科大学/医学部/本試験)

 「格差社会」は、資本主義自由経済制を選択している以上、ある程度仕方のないことであるが、大きな格差は弱者の「人間としての尊厳」を著しく奪うという意味で、避けるべきであると私は考える。一例として国民皆保険制度の崩壊による医療格差について述べる。
 国民皆保険制度は、全国民が一定額の保険料を支払うことで、低額で医療を受けられるという意味で、本来弱者に対して有利な制度であった。しかし貧困層が増加し、保険料の支払いが出来ない人が医療を受けられない一方、富裕層も貧困層と同様の金額で医療を受けられるという点で、現在では富裕層に有利な制度と化しつつある。満足な医療を受けられずに弱者が苦しむのは「健康で文化的な最低限度の生活を営む」国民の権利を侵害していることになるし、「医療を通して国民を幸福にする」という医療本来の目的から考えても適切であるとは言えない。こうした格差解消のための手段を、早急に講じるべきである。
 医療費が国家の財政を大きく圧迫する現状を考えれば、弱者の医療費や保険料を安易に無料化することは困難である。富裕層に対しては、これまで以上の保険料の増額や、所得に応じた医療費の段階的設定などを通して、弱者に優しい医療に協力してもらえるよう努力すべきであるし、医療の側でも、プライマリーケアに対しては基本的により低額で提供するといった形で、貧困者に対する医療の間口を広げる努力を行うべきであると考える。(596字)
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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