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(公理)②:日本語表現力

 医系小論文では、日本語表現力の有無も合否に関わる要素として要求されている。日本語表現力として考えられている事柄をおおよそ以下に列挙してみると、
 ●主語・述語・目的語・助詞・修飾表現等が適切に配置された「文」の作成能力。
 ●「文」と「文」とをつなぐ接続語の適切な使用能力。
 ●問題文の適切な要約的把握力。設問文の適切な理解力。それらを反映した記述能力。
 ●テーマ理解力。それを反映した論文構成能力。
 ●適切な因果関係の把握力。それを反映した文章構成能力。
 ●基本的な説明能力。「主張」「理由」「具体例」「結論・展望」の適切な提示能力。
 ●基本的な分析能力。「メリット」「デメリット」「立場による意見の相違」の理解能力。
 ●弁証法的問題解決能力。極論に走らず、立場を超えた妥当な解決策を提示する理性の保持能力。
 ●字の綺麗さ。漢字の適切な記述能力。
 ●医療人としての資質を感じさせる主張・意欲の提示能力。
といった感じになる。
 何故こういった能力が医系小論文で要求されているのかというと、それが実際の医療場面における、医師の患者の対する「説明能力」と同じものだからである。通常の診療場面や、病状・対処法の説明といった「インフォームド・コンセント」の場面、告知の場面において、こうした能力は「会話表現」の形で要求されている。きちんと論文が書けるということは、患者に対してきちんと説明できるということと同じなのである。理数系の能力が高く、どれほど医学的な知識をきちんと吸収・活用できる力があったとしても、それを患者に適切な形で伝え、同意してもらう能力がなければ、医療は成り立たない。その能力の確認を、小論文で行っているのである。
 場合によっては「思いがしっかり書けていれば、字の綺麗さや誤字・脱字は関係ない」と考える生徒もいるかもしれないが、それは誤りである。書いている文字の美しさ、正確さは「他者に対する配慮」の表れであるからである。小論文の採点者に対して、少しでも読みやすく、綺麗で正確な文章を書こうとする配慮が、「患者に説明する際の配慮」に繋がっている。だから医系小論文では字の美しさや正確さを他の学部以上に重視するのである。以前も書いたが、久留米大学では字が汚い時点で30%の減点を行う。福岡大学では採点さえされない。また「患者」を「看者」と書いたり「不可欠」を「不可決」と書くようなミスも減点となる。こんなミスは有り得ないと考えるかもしれないが、毎年少なからず見かけている。昔、「医師」を「医し」と書いていた論文を見て絶句した事もある。「師」が分からなかったのである。自分がなろうとしている職業名も書けない生徒を、大学に入れたいとは思わない。「分からなければ平仮名でいい」という考えも一面は真理であるが、分からないにも程がある。漢字をきちんと書けることは、それなりに重要なのである。
 小論文を書く生徒は、少なくともこうした事柄を意識して、小論文を書いて欲しい。どうしても綺麗に字が書けない場合は、「濃く・大きめに書く」とそれなりに綺麗に見える。自分の字のあり方を「変えよう」とする努力は、最低限行って欲しいのである。
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玄武庵

Author:玄武庵
日本の片隅で予備校講師をしながら旺文社(入試問題正解)・教学社(赤本)等で作問・解答・解説等の仕事をしています。小論文は自分の頭で考えて書くことが一番大事ですが、その際の参考にしてもらえるとうれしいです。頑張ってください。(※コンテンツはすべて無料です)

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